クラフトジンの先駆けと呼ばれるジン、「シップスミス」
今、バーの世界ではクラフトジンが大ブーム。
その個性的で高品質な味わいは、瞬く間に世界に広がっていきました。
では、その「クラフトジンの先駆けとなったジン」と言われる銘柄をあなたはご存知でしょうか?
その名は「シップスミス」
ジンの本場ロンドンで2009年から製造されている、比較的新しいジンです。
・このジンはどのような特徴があるのか?
・おいしい飲み方は?
実際にカクテルを作って味わいを探ってみましたので、まとめていきたいと思います。
シップスミスの特徴
シップスミスの販売価格は、他のジンよりも少々お高め…。
となると、本当に高いお金を払う価値があるか?
という疑問が出てきますよね。
味の好みは千差万別ですから、絶対的な答えはありませんが…
私は実際に口にしてみて、「十分にその価値アリ」だと感じました。
まずは、シップスミスはどのようなこだわりを持って作られているのか?
そちらから見て、このジンの魅力に触れてみることにしましょう。
銅製単式蒸留器を使ったこだわりの製法
シップスミスのラベル。
蒸留器?から白鳥が生えてきて、ジュニパーベリーの枝に首を伸ばしている…
と、なんとも前衛的な感じですよね (笑)
これはただの奇抜な絵ではなく、キチンとした由来があります。
それがシップスミスの蒸留に使われる「銅製単式蒸留器」です。
※シップスミスオフィシャルサイト(https://www.suntory.co.jp/wnb/sipsmith/#)より引用
ラベルの絵とどことなく似ていますよね。
そう、あの白鳥はこの蒸留器のスワンネック (白鳥の首)をモチーフにしたものだったんです。
単式蒸留器はスピリッツの生産効率があまり良くありません。
ですがその分、素材の風味や個性がよくスピリッツに現れてきます。
これは量より品質という信念。
そして、品質の良い材料を活かすという意匠の現れだと言えるでしょう。
単式蒸留器は人気のジン、「タンカレーNo.10」にも使用されています。
そのおかげか、「タンカレーNo.10とシップスミスは味が似ている」という話もありますね。
蒸留液の "いいところ" だけをボトリング
※シップスミスオフィシャルサイト(https://sipsmith.com/)より引用
シップスミスのこだわりは使っている蒸留器だけでなく、製法にも現れています。
それが「ワンショット製法」と「ミドルカット」です。
【ワンショット製法】
同じ材料を使った蒸留は一回のみ、という蒸留方法。
使用済みの材料は再度蒸留に使用しません。
通常のジンは、同じ材料で数回の蒸留を行なっています。
【ミドルカット】
香味成分に優れた蒸留過程中盤の蒸留液。
シップスミスはこの部分だけをボトリングしています。
通常のジンは蒸留始めの「ヘッド」、蒸留後半の「テール」と呼ばれる蒸留液もすべて使用しています。
いわば、ジンの一番出汁の上澄みをすくっているようなものですね。
生産量より味わいを重視した、非常に贅沢なつくり。
クラフトジンの醍醐味とも言える部分です。
シップスミスに使われるボタニカル
ジンといえば、香り付けに使われるボタニカル。
こちらが味わいを決める大きな要素となります。
それでは、シップスミスはどのようなボタニカルを使っているのか?
見てみることにしましょう。
【シップスミスに使われるボタニカル】
・ジュニパーベリー
・コリアンダーシード
・オレンジピール
・レモンピール
・シナモン
・桂皮
・アーモンドプードル
・オリスの根
・リコリスの根
・アンジェリカの根
計10種類
ドライジンらしい比較的スタンダードな構成です。
種類だけみると、ボンベイサファイアに近いかもしれません。
ですが、こちらは材料の配合がジュニパーベリー主体になっているとのこと。
ボンベイはジュニパーが控えめなので、そちらとはやや異なる仕上がりになりそうです。
シップスミスの味わいは?テイスティングレビュー
それでは、シップスミスが実際にどんな味わいなのか確かめてみます。
常温ストレートで味わってみましょう。
【香り】鮮烈なジュニパー、柑橘
【味わい】スッキリと軽やか、クリア、繊細
【余韻】ジュニパーのスパイシーさ、ほんのりフローラル
ひとことで言うならば、「淡麗」なジン。
まずグラスに注いだときに気付くのは、鮮烈なジュニパーの香り。
香りだけ嗅ぐと、キリッとした感じで「No.3 ロンドンドライジン」のような辛口な味わいなのかな?と想像しました。
ですが、口にするとそのイメージは一変します。
ドライだけど華やか、繊細。そして上品な風味です。
柑橘系の香りや苦味はやや控えめ。
フローラルな香りもほんのりと感じますね。
アルコール感や口当たりは比較的マイルド。
常温ストレートでも美味しく飲めちゃいますね。
これはまさに、質の良いジンだけの特権です。
シップスミスはタンカレーNo.10に味が似ているという話をしましたが…
味の傾向は似ていても、受ける印象はまったくの別物でした。
あちらは「動」。こちらは「静」のイメージです。
※比較に出てきたジン、「No.3」と「タンカレーNo.10」については、おすすめジンの記事で特徴を紹介しています↓
シップスミスを使ってスタンダードカクテルを作ってみました
では、実際にシップスミスを使ってカクテルを作ってみましょう。
まずはスタンダードカクテルから。
はたして、既存のジンとはどのような違いが現れるのでしょうか…?
ちなみに、出てくるカクテルのレシピを知りたい方は、ジンベースカクテルの紹介記事を参照してください!
ジントニック
オススメ度 ★★★★★
いきなりですが、優勝級の美味しさです。
SNSなどでジントニック好きの方がよく飲んでいるのを見て、「そんなに美味しいの…?」と思い、試してみたんですが納得の味わい。
解けるように味わいが広がるというか…優しく舌に馴染んでいくイメージですね。
上品で優雅さのある一杯です。
私としては、このジントニックを飲むためだけにシップスミスを手にする価値があると思います。
お供にはぜひ、フィーバーツリーのトニックウォーターを…!
ちなみにトニックウォーターの種類については、こちらの記事で解説しています。
ジンリッキー
オススメ度 ★★★☆☆
シップスミスの味わいを活かすならば、なるべくシンプルなカクテルがいいかな…?
と思い、ジンリッキーを作ってみました。
ジン45mlに対してソーダ100mlほどで作ったのですが、残念ながらちょっとぼやけた印象になってしまいました。
甘みを加えないロングカクテルの場合は、シップスミスを少し多めにした方がいいかもしれませんね。
ギムレット
オススメ度 ★★★★★
お次はギムレットを。
繊細さのあるジンだからどうなるか?と思ったんですが、これは美味しいですね!
とにかくクリアで上品。
いつも通り、少し長め強めにシェークしたのですが特に問題ないですね。
ギムレットは男性的なイメージですが、こちらは女性的な優雅なニュアンスもあります。
ホワイトレディ
オススメ度 ★★★★☆
白い貴婦人、ホワイトレディで飲んでみます。
これは、かなりのサッパリ風味ですね。
ドライで上品な味わいなので、イメージにふさわしい仕上がりとなったのではないでしょうか?
ただ10秒ほどのシェークだと、少しだけ水っぽさを感じてしまいました。
今回はジン4、キュラソー1、レモン1の分量で作りましたが、ジンをさらに強めにしてもいいかもしれません。
ブルームーン
オススメ度 ★★☆☆☆
パルフェタムールと合わせたカクテル、「ブルームーン」を作ってみます。
今回はシップスミス40ml、パルフェタムール10ml、レモンジュース10mlの分量にしてみました。
パルフェタムールは控えめにしないとシップスミスの風味がぼやけてしまうかな…?と思ったからです。
サッパリ風味で美味しい、ですが他のジンでもいいかな…というのが正直な感想です。
この分量でもシップスミスの個性がぼやけてしまったので、活かすのは難しいかもしれないです。
ジンフィズ
オススメ度 ★★★★★
ジンフィズを作ってみます。
こちらも繊細なシップスミスだとどうかな…
と思っていたのですが、かなり美味しいですね!
ビーフィーターやゴードンでは作れない、非常に上品な仕上がりです。
ジンを少し強めにしたのが良かったかもしれません。
物足りなさを感じたら、分量を調整して作ってみてください!
シップスミスを使った準スタンダード、創作カクテルのレシピ
シップスミスを使えば、多くのオリジナルカクテルを作ることことができます。
ということでお次は、スタンダード以外のレシピを紹介していきましょう。
準スタンダードから創作レシピまで。
実際に飲んでみて、「シップスミスの味わいが上手く活かされているな」と感じたものを載せてみました。
ジンバジルスマッシュ
【材料】
シップスミス 50ml
フレッシュレモンジュース 15ml
シュガーシロップ 10ml
バジルの葉 6〜12枚
【作り方】
ボストンシェーカーにバジルを入れて、ペストルでマドルする。
氷と残りの材料を入れてシェークし、氷を入れたグラスに注ぐ。
バジルの葉を飾る。
まずは海外で人気のレシピ、「ジンバジルスマッシュ」です。
いいですねこれ。
シップスミスのクリアーな味わいが、バジルの爽やかさと良くマッチしています。
普段はビーフィーターなどで作っているのですが、こちらの方が仕上がりのレベルは高いと思います。
この辺りはさすがクラフトジン、と言った感じですね。
バジルの風味が突き抜ける、清涼感のある味わい。
暑い日には特にオススメのレシピですよ!
アビエーション
【材料】
シップスミス 60ml
マラスキーノリキュール 10ml
バイオレットリキュール 10ml
フレッシュレモンジュース 15ml
マラスキーノチェリー
【作り方】
氷を入れたシェーカーに材料を入れてシェークし、カクテルグラスに注ぐ。
マラスキーノチェリーを飾る。
パルフェタムールを使った「アビエーション」です。
甘口かな?と思ったんですが、想像したほどではないですね。
マラスキーノの香ばしさと、ジンのシャープな味わいが主体。
甘さは主に香りから感じるイメージです。
そして、やはり上品で優雅な仕上がり。
こちらも、シップスミスの個性が光る一杯です。
サウスサイドフィズ
【材料】
シップスミス 50ml
フレッシュライムジュース 25ml
シンプルシロップ 15ml (シュガーシロップの場合は7.5mlほど)
炭酸水 少量
ミントの葉 ひとつかみ
【作り方】
ボストンシェーカーにミントの葉と炭酸水を入れて、軽く潰す。
残りの材料、氷を加えてシェークする。
氷を入れたグラスにメッシュで漉しながら注ぎ、ミントの枝を飾る。
シェークで作る、シップスミス版モヒートといった感じのレシピです。
清涼感のある爽やかな風味。
スッキリした飲み心地。
いや〜、夏のカクテルですね。
モヒートと比べると、かなりサッパリした風味。
スイッと飲めちゃいますね。
アレンジレシピの1つとして楽しんでみてはいかがでしょうか?
ちなみにモヒートのアレンジレシピは、別記事でも沢山紹介しています。
こちらもぜひどうぞ。
ペグークラブ
【材料】
シップスミス 40ml
オレンジキュラソー 15ml
フレッシュライムジュース 15ml
アンゴスチュラビターズ 1dash
オレンジビターズ 1dash
【作り方】
氷を入れたシェーカーに材料を入れてシェークし、カクテルグラスに注ぐ。
スライスしたライムを飾る。
20世紀初期に、現在のミャンマーで生まれたと言われるレシピ。
ペグーという街の、外国人専用社交クラブが名前の由来なのだそうです。
味に奥行きがあり、まろやかになったホワイトレディって感じの味ですね。
酸味が効いているので、なるべくキリッと冷やして作りたいレシピ。
ジンの状態、シェークの長さなど工夫してみてください。
チェルシーサイドカー
【材料】
シップスミス 35ml
トリプルセック 15ml
フレッシュレモンジュース 25ml
シュガーシロップ 10ml
【作り方】
氷を入れたシェーカーに材料を入れてシェークし、カクテルグラスに注ぐ。
第一次大戦時代に生まれた、クラシックなカクテルです。
レシピだけ見るとシロップを加えたホワイトレディ…?
レモンも多めでその分、ジンが控えめになっていますね。
実際に飲んだ印象も、当然ホワイトレディに近かったです。
ですが、こちらは柔らかで親しみのある味わいでしたね。
ジンは抑えめですが、シップスミスの個性もしっかり感じます。
私は、シップスミスを使うならスタンダードのホワイトレディよりこちらをオススメしますね。
あまり見ないタイプのレシピですが、しっかりバランスは取られていますよ!
モンキーグランド
【材料】
シップスミス 60ml
フレッシュオレンジジュース 45ml
アブサン 3drops
グレナデンシロップ 5ml
シュガーシロップ 5ml
【作り方】
氷を入れたシェーカーに材料を入れてシェークし、カクテルグラスに注ぐ。
お好みでオレンジピールの飾りをつける。
1920年代に生まれたと言われるレシピをシップスミスで。
クラシックなレシピですが、飲んでみると洗練されている印象を受けますね。
この辺りはシップスミスの力なのでしょうか?
アブサンも味の奥行きを演出するのに一役買ってくれていますね。
古くも新しい、可憐な飲み心地の一杯です。
ウォーターメロンマティーニ
【材料】
シップスミス 30ml
フレッシュスイカジュース 60〜90ml
レモンジュース 1tsp
シュガーシロップ 1tsp
【作り方】
カクテルグラスの縁をレモンの果肉でなぞり、塩を付けてスノースタイルにする。
材料を氷を入れたシェーカーでシェークして、グラスに注ぐ。
シップスミスをフレッシュフルーツカクテルにも使ってみましょう。
これは美味しいですね!
スイカのフレッシュな風味がジンとよく合っています。
塩のアクセントも心地よく、なんだか懐かしい気分にさせてくれますね。
ジンベースなのに柔らかな飲み心地なのもいいですね。
この他にもいろいろなフルーツとの組み合わせを試してみたくなります…!
ちなみにフレッシュフルーツカクテルについては、まとめ記事を書いています。
どんなものが作れるか知りたい方は、チェックしてみてください!
シップスミスの銘柄バリエーション
シップスミスには、さまざまなバリエーションの銘柄があります。
その中で2019年8月現在、日本国内で手に入るものは2種類。
それぞれの特徴について説明します。
シップスミス ロンドンドライジン
シップスミスの基本の銘柄です。
10種類のボタニカルを使用してジンの蒸留液の美味しいところだけをボトリング。
スタンダードながら、気品のある味わいが特徴のクラフトジンです。
アルコール度数も41%と使いやすい範囲内。
ちなみに今回テイスティング、カクテル作りに使用したのはすべてこの銘柄ですね。
色々作ってみての感想としては…
甘みと酸味、両方加えるレシピだと特に輝くジンだなと思いました。
(ギムレット、ジンフィズ、そしてジントニックなどですね。)
シップスミス VJOP
通称「シップスミス ブラック」。
通常のシップスミスと何が違うのかというと、製造に使われるジュニパーベリーの量が違います。
その差はなんと約3倍です。
つまりこれは、「ジュニパーベリーを強烈に効かせたシップスミス」というわけですね。
アルコール度数も、高めの57%に設定されています。
この銘柄は、「美味しいジントニックを作るためのジン」というコンセプトで生まれたジンなのだそうです。
なので、やはりおすすめの飲み方はジントニック!
と胸を張って言いたいのですが、筆者はまだこのジンを飲んでいません()
詳しいレビューは実際に飲んでみてからということで、ご容赦ください… (汗)
一応、参考までに。ジンラヴァーたちの感想はおおむね良好みたいです…!
(ストレートで飲みまくっている人もいて、強いなぁ…とただただ感心しています。)
ゆっくりと浸るように、シップスミスを楽しんでみては?
シップスミスの特徴と味、楽しみ方を紹介しました。
繊細な味わいのジンなので、カクテル作りには少しだけコツがいるかもしれません。
ですがその分、型にハマったときの味わいは素晴らしいですね。
ちなみに、シップスミスの「sip」には、「ひとくち」「ゆっくり楽しみながら味わう」という意味もあるそうです。
ひとくちずつ、味わいに浸りながら…
このプレミアムなジンを楽しんでみてはいかがでしょうか?
シップスミス以外のジンのオススメ銘柄についてはこちら。
味わいのタイプ別、予算別に紹介しています。
その他の蒸留酒、リキュールなどのオススメ銘柄のまとめはこちらになります。