https://whiskywaffle.com/2014/10/07/laphroaig-10/
ラフロイグはスコットランド、アイラ島で製造されるウイスキーです
アイラ島で作られるウイスキーとしてはメジャーな銘柄。ボウモアと並んで癖のある味のウイスキーとして広く知られています
数あるウイスキーの中でも特に強いスモーキーフレーバーとピート香を持っている銘柄で、その独特な香りは正露丸のようだと例えられる事もあります
ウイスキーは飲み慣れているけどラフロイグはちょっと苦手、という方も多くかなり人を選ぶ銘柄だと言えますね
そのような独特な風味を持つラフロイグに付けられたキャッチコピーがこちら
”You either love it or hate it”
惚れ込むか嫌いになるか、どちらか
ラフロイグを口にした事がある人なら思わず頷いてしまうフレーズですね
このウイスキーを飲んで「なるほど、こんなものか」というような淡白な感想は出てきません。その味が好みだったにしろ、好みではなかったにしろ、私たちに忘れがたい強烈な印象を残してくれます
そして個性が強いぶん、一度その味を受け入れてしまった人はラフロイグの熱狂的なファンとなることが多いですね
かの英国のチャールズ皇太子もこの味に惚れ込み、王室御用達のウイスキーとして任命。新製品がリリースされるたびにいち早く試飲をし、ラフロイグの買い付けのために蒸溜所に本人が訪れることすらあるそうです
この事はラフロイグが豊かな香味を持つ高品質なウイスキーであるという事の裏付けとしてよく知られているエピソードですね
私も最初にラフロイグを口にした時は、煙たさと薬品臭ばかりが鼻について「なんだか不思議な味」という感想しか出てこなかったのですが、今ではその魅力にすっかり取り憑かれてしまいました
ラフロイグが好きになったことで他のアイラモルトにも興味が湧いてきて、次々とボトルを買い漁ったことをよく覚えています
一度はまり込むと二度と抜け出せない…気が付いたら首まで浸かってしまいスモーキーフレーバーとヨード香の虜になってしまう…
まさに深い沼のような危うい魅力を持つ銘柄だと思います
ラフロイグの製法と味の特徴
ラフロイグはアイラ島の自然の恵みと伝統の製法によって独自のフレーバーを生み出しています
まず製造に使う仕込み水はピート層を浸透してきたもの
そして麦芽乾燥に使うピート(泥炭)はアイラの湿原にあるラフロイグ専用の採掘場のものを使用しています
採掘場は海に近い位置にあるので水分量が多く、海草やコケ類が豊富に含まれています。このアイラ島固有のピートがラフロイグのフレーバーの決め手となっています
麦芽の製造は主にポートエレンに委託をしているのですが、15%ほどはラフロイグの蒸留所でフロアモルティングの技法によって作られています
ピート成分が含んだ仕込み水をたっぷり含んだ大麦をフロアの床に平らに広げ、数時間おきに職人が手作業で撹拌を繰り返して発芽を促します
以前にボウモアの記事でも説明をしましたが、古典的で手間のかかる製造方法です。しかしそれがラフロイグの味に個性を与え、奥深い風味を生み出しているのだと私は思います
海の香りのアイラモルト「ボウモア」の魅力 - NomiLOG
発芽した大麦はピートを焚き付けて乾燥と香り付けがされます
焚きつけをはじめた段階では大麦がまだ湿った状態であるため、燻煙が水分によく溶け込み麦芽が強いスモーキーフレーバーを纏います
そして焚きつけの工程の後半では入り江から吹き込む潮風を取り込むことによって、甘さ、スモーキーさ、潮のフレーバーが含まれたラフロイグ独自の麦芽となります
https://www.whisky.com/whisky-database/distilleries/details/laphroaig.html
製麦が終わった麦芽は糖化、発酵の工程を経ていよいよ蒸留へと入ります
蒸留器はアイラの中ではもっとも小型のものとなっており、この形状がラフロイグの重厚な風味の元となっていると言われています
蒸留後は主にバーボンの1stフィルの樽に詰められて熟成の工程へ
バーボン樽を使用することによってラフロイグはバニラを連想させるような甘い風味と滑らかさを獲得します。単にスモーキーなだけでは無く、奥深い香味や優しさを感じるフレーバーはこうして作られている、というわけですね
さて、それではラフロイグは実際にどんな味がするのか?
やはり最大の特徴はピーティーでスモーキーな香りとなっています
同じくアイラの名酒であるボウモアのフェノール値は20~25ppmとなっていますが、ラフロイグは40~45ppm。シンプルに考えるとボウモアの2倍煙たい、という事になります
スモーキーなウイスキーに慣れていない人にとってはまさに強烈な風味です
しかしラフロイグには単に煙たいだけではなく、フルーティーさ、コクのある甘さや香り、後味に感じるドライな渋みなどの魅惑的な要素があります
甘み、酸味、渋み、香りのバランスもよく非常に高品質なモルトだと思います
一見、ただの癖の強いウイスキーに見えますが、よくよく味わってみるとその完成度の高さに気づく…分かってしまった人だけがこの甘美な幸せに浸ることができる…
そのようなある意味排他的とも言える魅力が世界中の人々の心を惹き付け、離さないのでしょう
ラフロイグのラインナップとオススメの飲み方の紹介
ラフロイグは熟成に使用する樽の違いや、熟成年数の長さによって様々な銘柄があります
今回はその中から、もっともスタンダードな銘柄の「ラフロイグ10年」と長期熟成の「ラフロイグ18年」の味のレビューとオススメの飲み方を紹介したいと思います
ラフロイグ10年
ラフロイグの基本の銘柄となるのがこのラフロイグ10年
グラスに注ぐと強烈な薬品臭とピート香が鼻をつきます
口に含むと、その味は苦くてアルコールが強く、これは薬なんだか酒なのかよく分からない…と、これは私がウイスキー飲み始めの頃にラフロイグを飲んで感じた印象です
このように以前の自分のようなアイラモルトに慣れていない人がこのウイスキーを口にしても、受ける印象は正直あまりポジティブなものではないでしょう
しかし数多くのウイスキーを飲み、その味わいに慣れ、ある程度経験値が溜まったと言える状態でこのモルトと向き合うと今までの印象が一変します
鼻をつくスモーキーさとヨード香は唯一無二の個性に、強いアルコール分は香りを弾けさせる最高のエッセンスに、重い口当たりはコクのある飲みごたえに…
そして煙たさの奥に甘いバニラのテイストやフルーティでとても魅惑的な香りが潜んでいることに気づくはずです
そうか、このウイスキーが最初は美味しくないと感じたのは、自分自身が未熟であったからだ…
ラフロイグの魅力に気づいた方は皆、そのような自責の念に駆られることでしょう笑
以前にラフロイグを飲んでみたけど口に合わなかった、という方も気が向いた時にこのモルトをぜひもう一度口にしてもらいたいと思います
味覚は経験によって成熟していきます。その過程でこのモルトの魅力に気づいていただければ、私のようなラフロイグのファンとしてこれほど嬉しいことはありません
楽しむためには少々敷居が高く感じるかもしれませんが、それを乗り越えた先にあるのは魅惑的で奥深い世界。ぜひトライしてみてもらいたいと思います
このラフロイグ10年は比較的重めの味わいと言えますが、その奥に若々しさを感じる華やかな香りも感じることができます
ラフロイグのエントリーモデルながら非常に満足感の高い完成された一本。まずはこの銘柄でアイラの雄大な自然の恵みと向き合ってみてはいかがでしょうか?
オススメの飲み方はやはりストレートでしょう
水割りやハイボールなどで薄めてしまうとアルコールの度数は下がるものの、スモーキーさだけが際立ってしまうため、個人的にはストレートやロックより飲みづらく感じます
じっくりと、味わいを探るようににストレートで嗜むことで、このモルトの魅力に気付くことができるはずです
ラフロイグ18年
10年に比べるとスモーキーフレーバーやヨード香よりも甘さやフルーティさが際立つようになります
ただフルーティとは言っても、ドライフルーツのような熟成感のある旨味が凝縮された味といった感じです
口に含むとほろ苦さと共にやわらかな甘さを感じ、潮と煙の香りに満たされます
その中にフルーティで濃厚なフレーバーがあり、口当たりは非常にオイリー
余韻も長く、その装いには高貴で上品な印象を受けます。ラフロイグ10年が若々しい田舎のお嬢さんなら18年はドレスの似合う妙齢の女性、といったイメージでしょうか
甘み、苦味、酸味、そしてさまざまな魅力的な香りが高いバランスでまとまっている銘柄です
ラフロイグ10年を飲んで感動を覚えた方はより深い感動に浸ることができるでしょう
この銘柄を飲まずしてアイラのウイスキーを語るなかれ。それほどまでにレベルの高い味わい、完成度の高いウイスキーだと私は思いました
こちらも嗜む際にはストレートで飲むことをオススメします
ストレートで飲み進めながら、ごくごく少量の加水をして甘みと酸味の変化を楽しむというのもなかなか面白いです。ですけど、このレベルの味わいなら加水を忘れて最後まで飲み切ってしまいそうですね
さいごに
私自身がとても好きなウイスキーなので少々熱く語ってしまった形となってしまいましたが、それほどまでに、思わず熱弁したくなるほどの魅力があるモルトなのだと私は思っています
ある意味排他的な魅力を持つウイスキーだと紹介しましたが、やっぱり多くの人にこの魅力を知っていただきたいですね
思えば私がラフロイグを手に取ったのはウイスキー初心者の頃に友人にオススメの銘柄を聞いたのがキッカケでした
ウイスキー初心者にラフロイグを勧めるなんてとんでもない!と思う方もいるかも知れないですが、きっとその人も私がラフロイグの魅力に気づいてくれると思って勧めてくれたのでしょう
例え最初は受け入れられない味だ、と感じてもいつかまた口にして美味しいと思ってもらえると信じて…
ラフロイグは誰にでも勧めることができるものではないのは分かっているのですが、私も友人にオススメのモルトを尋ねられたらこう答えようかと思います
「オススメのウイスキーはラフロイグ。きっと気にいるはずだよ」